ノーコードサロン ClaudeCode入門講座 / 26
SECTION 26

26|プロンプト→コンテキスト→ハーネス:AI活用の重心の変遷

AIの使い方は「指示の言葉を磨く」段階から、「AIに渡す情報を設計する」段階、さらに「AIが作業する仕組みそのものを設計する」段階へと重心が移ってきました。ここではその3つの段階(プロンプト/コンテキスト/ハーネス)の意味と違い、そして本講座の各章との対応を整理します。

26-1 3つの段階の全体像

AI活用の焦点は、大きく次の順で移り変わってきました。後の段階が前の段階を置き換えるのではなく、積み上がっていく関係です。

段階時期の目安焦点(何を工夫するか)代表例
プロンプトエンジニアリング2022〜2023頃指示(プロンプト)の書き方役割指定・例示・手順化
コンテキストエンジニアリング2023〜2025頃AIに渡す情報の設計RAG・メモリ・CLAUDE.md
ハーネスエンジニアリング2025頃〜AIが作業する仕組みの設計エージェント・検証ループ・分業
キーワードは「どう言うか何を見せるかどう働かせるか」。モデルの性能が上がるほど、工夫の重心は言い回しから、情報の与え方や作業の仕組みへ移っていきます。

26-2 プロンプトエンジニアリング:指示の書き方を磨く

プロンプトエンジニアリングは、モデルへの指示文(プロンプト)の書き方を工夫して出力の質を上げる技術です。ChatGPTが広く使われ始めた時期に注目されました。

代表的な工夫は次のようなものです。

  • 役割を与える:「あなたはプロのWebデザイナーです」のように立場を指定する。
  • 例を示す(few-shot):入力と出力の例をいくつか見せて、期待する形式を伝える。
  • 手順を踏ませる:「まず要件を整理し、次に…」と考える順序を指定する。
  • 出力形式を指定する:「表で」「箇条書きで」「HTMLだけ返して」など。

限界もあります。モデルが賢くなるほど、言い回しの細かな工夫による差は相対的に小さくなります。また、判断に必要な情報がそもそも渡っていないと、どれだけ指示を磨いても望む結果にはなりません。ここから次の段階につながります。

26-3 コンテキストエンジニアリング:AIに何を渡すかを設計する

コンテキストエンジニアリングは、モデルが一度に見るコンテキスト(文脈=与える情報)に何を入れるかを設計する技術です。焦点が「どう言うか」から「何を見せるか」へ移ります。

コンテキストに含めうるものには、たとえば次があります。

  • 関連するドキュメントやデータ(必要な部分だけ検索して渡す=RAG)
  • 過去のやりとりや、覚えておきたい前提(メモリ)
  • ツールの実行結果(ファイルの中身、検索結果など)
  • 参考にしてほしい実例や、プロジェクトの現在の状態
前提は「モデルは十分に賢いことが多く、ボトルネックは必要な情報が文脈に入っているかどうか」という考え方です。同じモデルでも、渡す情報の質で結果が大きく変わります。

本講座で扱う CLAUDE.md(第7章)、design.md(第8章)、Notionの知識ベース(第14章)は、いずれも「毎回AIに渡す前提情報を、あらかじめ用意しておく」という点でコンテキストエンジニアリングの実践にあたります。

26-4 ハーネスエンジニアリング:AIの作業環境そのものを設計する

ハーネスエンジニアリングは、モデルの周りにある「ハーネス(作業のための足場・仕組み)」を設計する技術です。ハーネスとは、AIがタスクを進めるための仕組み一式を指します。

具体的には、次のような要素をまとめて設計します。

  • 使えるツールの定義(ファイル操作・コマンド実行・外部連携など)
  • コンテキストの出し入れ(必要な情報をどのタイミングで渡し、いつ要約するか)
  • 承認・検証のステップ(危険な操作の前に確認する、結果をチェックする)
  • サブエージェントによる分業(第16章)や、外部ツール連携(MCP・第17章)
  • うまくいくまで繰り返す・自己修正するループ

ClaudeCode 自体が、このハーネスの一例です。ファイル操作・ターミナル・権限確認・計画・サブエージェントなどを1つの流れに束ねています。近年は、成果を左右するのが単発のプロンプトよりも「ハーネスの良し悪し」——どう文脈を管理し、ツールを回し、結果を検証して再試行するか——になってきています。

例:レビューを1回で終わらせず、自分で決めた基準(たとえば90点以上)を満たすまで繰り返し検証させ、満たしたときだけ人に確認を求める——こうした「検証ループ」もハーネス設計の一部です。

26-5 本講座との対応と、実務での積み上げ方

3つの段階は、本講座の各章と次のように対応します。

段階やること対応する章
プロンプト日本語で的確に指示する第10章(サイト生成)ほか
コンテキスト前提情報を用意して渡す第7章 CLAUDE.md/第8章 design.md/第14章 Notion
ハーネス作業の型(分業・連携・検証)を組む第16章 マルチエージェント/第17章 MCP

実務では、この3つは置き換えではなく積み上げで考えます。まず指示を的確にし、次に必要な情報を渡す仕組みを整え、さらに作業の型(検証ループや分業)を用意する、という順で効果が重なっていきます。どれか1つだけでなく、段階的に整えていくのが現実的です。